片翼を君にあげる②
「……ジャナフ。
食事の支度をしよう。手伝ってくれるか?」
「あ、うん。もちろん!」
ずっと背後に付いていてくれたジャナフに声を掛けて、俺はテントを出ると馬車の積荷を漁った。
日持ちする根菜を中心にした野菜、干し肉、米に、塩などの調味料。更に調理器具や火を起こす道具。
父さんが良くキャンプに連れて行ってくれたから、その一式には幼い頃から使う事に慣れていて有り難い。
……いや。
もしかしたら、父さんは分かっていたのかも知れない。幼い頃の遊びの一環は、全て夢の配達人に繋がる事を……、……。
「ーー何やら、楽しそうじゃの?」
「!……蓮葉様?」
昔の事を思い出しながら料理の準備をしていると、いつの間にかテントから出て来ていた蓮葉様が背後から覗き込みながら言った。
そして、腕捲りをしながらニッと微笑えむ。
「わしもやる!」
「え?」
「わしも手伝ってやる、と言うておるのじゃ!」
「えぇ〜!?あ、危ないですよ〜!
さすがにそれはボク達に貸して下さ〜い!!」
ナイフを手に持ち楽しそうにする彼女を見て、ジャナフはタラタラと冷や汗を流しながら慌てた。
しかし、蓮葉様はナイフを返さず「ベッ」と舌を出して笑う。
「嫌じゃ!瞬空はいっつも何もさせてくれぬからの。
わしの儀式の為に皆付いて来てくれておるのに、その当人であるわしが1人だけ休んでおるのは、違うと思わぬか?」
「!……それ、は…………」
無邪気だった彼女にそう言われて、ジャナフはハッとして言葉を返せずにいた。
美しい音が響いて、俺の心にも浸透する。
「わしは皆と対等で居たい。
わしと共に居てくれる者と、同じ時間を共有したいのじゃ!」
そう言って、最高の笑顔を向けられれば、もう俺達は彼女に逆らえなかった。そして……。
「ツバサ。そなたはそなたで良い」
「!……え?」
「今わしの護衛隊長はそなたなのだ。
瞬空とは違うやり方で、わしを護ってくれ」
「!ーー……ッ」
完全に見透かされていた。
この村でのアメフラシに対する状況を目の当たりにして、"俺じゃなくて瞬空さんなら、もっと上手く蓮葉様を護れたのでは?"と言う気持ちをーー……。