片翼を君にあげる②
でも、それにしてもーー……。
「……。優しい、ですね」
「!……え?」
レノアーノ様の行動に、思わず口から本音が出た。
だって、彼女の立場からしたら蓮葉様は恋敵と言うやつだろう。
しかも、さっき蓮葉様に"ツバサは自分のもの"みたいに意地悪な事を言われたばかりなのに……。それなのに、相手を気遣えるなんて。
彼女もまた、ツバサと同じくらい心が美しいのだとすぐに分かった。
「ツバサがレノアーノ様が好きなの、分かります」
敵わない、と。
悔しいくらいに、お似合いの二人だと思った。
ボクがそう言って微笑むと、レノアーノ様は少し頬を赤く染めて口を開く。
「ジャナフ君、って呼んでも大丈夫ですか?」
「!……は、はい」
「夢の配達人の見習い、とおっしゃってましたね。ツバサとは仲がよろしいのですか?」
「あ、えっと……。
故郷から出て来て困っていた時にツバサ君が助けてくれて……。それから、今も彼の元で色々と学ばせてもらっています」
この時ボクは、ツバサと友達だ、って言い切れなかった。
最近のツバサのよそよそしさを気にして、果たして友達だと呼べるのか自信がなくなってしまっていたんだ。
けれどそんなボクにも、レノアーノ様は優しい言葉を掛けてくれる。
「そう。良かった」
「!……え?」
「ツバサはね、ああ見えて不器用で……。弱い所もあるから、ジャナフ君みたいな優しい方が側に居てくれたら安心出来ます。ありがとう」
「っ……」
ありがとうーー。
まさかそんな言葉を言われると思ってなかったボクは、嬉しいような恥ずかしい気持ちが押し寄せて来てジワッと涙が浮かんでしまう。
「あ、っ……でも。
ボク、何も出来なくて……ツバサ君の足ばっかり、引っ張ってッ…………」
潤んだ目を隠すように少し伏し目がちでそう言うと、レノアーノ様は首を横に振ってボクの手をギュッと握り締めて微笑った。
「ツバサは絶対にそんな風に思ってないわ。
だから、これからも彼をよろしくお願いします」
「っ、……はいっ!」
彼女の優しさに触れて、弱気になっていた心が癒されていくのを感じた。