片翼を君にあげる②

もしかして、ジャナフは気付いてるーー?
俺が、普通じゃない、って……。
そう、思ってるのかーー……?
 
《ーー仕方ないだろう?》

!っーー……。

《だって、お前は、普通じゃないんだから……》

また心の奥底で、何かが俺に囁く。
現実でジャナフが俺に言う。

「何かあるなら話してよ!ねっ?
っ……こんなの、ツバサらしくないよ!」

そして肩を掴まれた瞬間。
眼帯で塞いでいる筈の漆黒の瞳(左目)がドクンッと熱くなり、その奥底に何かが視える。

……
………過去か未来か、分からない。
けど、おそらく場所はドルゴア王国。
広くて、立派な調度品が飾られた建物の中。その中ですれ違うのは、身分が高そうな衣装を纏った者や、見事な武装をした兵士達。
その場所は、宮廷(きゅうてい)……?
これは、ジャナフの記憶の中なのだろうか?

そして、その宮廷の奥に見える、"ある人物"。
それは、輝く金色の髪にセピア色の瞳。直接会ったのは一度だけだが、忘れるはずもない相手。

ドルゴア王国、第一王子サリウスーー。

その人物を認識したと同時に、ある言葉が蘇る。

『あの者がサリウス王子の手の者、つまり間者(かんじゃ)だとは思わんのか?』

……
…………ーーバッ!!
俺は咄嗟に、ジャナフの手を振り払った。

「ーー……っ、え?」

手を振り払われたジャナフが、呆然と俺を見る。
この時、蓮葉(レンハ)に『疑う位なら、騙された方がマシ』と答えた俺は、いなかった。

弱って臆病になっていた心。
更に眼帯をしたままなのに触れられた事で発動してしまった能力(ちから)に動揺して、自分も、目の前の彼の事も、信用出来なくなってしまっていた。

「っ……俺らしい、って、なんだよ」

「え……?」

「お前っ……俺の何を知ってるんだよッ?!」

怖い。
怖い。
人間は、怖い。

「俺はな、綺麗でも、すごくもないんだよッ……!上辺だけ見て、分かったような口を()くなッ!!」

汚い。
汚い。
人間は、汚い。

「何かあったら話せ、だ?
っ……よく言うよな。お前だって、何も言わねぇじゃん!隠してる事、あるんだろっ!?」

嘘吐き。
嘘吐き。
人間は、嘘吐きだ。

"何か"が、囁き続ける。
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