片翼を君にあげる②
人間なんて、信用するな、とーー……。
「そんなんで友人面すんな!虫唾が走るッ……!!」
……
……、……シンッ、と。静まり返る。
時が止まったかのようなのに吹き抜ける風が異様に冷たくて、身体も心も冷え切っていた。
酷い、事をたくさん言った。
自覚は、ある。
でも、まるで"目の前にいる相手は敵"だと、暗示がかかったみたいに、言葉が止まらなかった。
コンナコト、イイタクナカッターー。
そんな感情が今更浮かんできても遅い。
目の前のジャナフが、相変わらず悲しい瞳で呆然と俺を見てる。
キラワナイデーー。
今更思っても、叫んでも、届かない気持ち。
……でも。
「はぁ……っ」と、息を吐いたら、俺の瞳から涙が溢れ出して、ポタポタと地面に落ちた。酷い事を言って、傷付けた側の筈の俺が、泣いた。
すると、悲しそうな表情をしていた自分よりも先に涙を流す俺を見て、ジャナフの表情が変わる。
「っ……ツバサ?」
「!!っーー……」
心配そうな表情で名前を呼んでくれて、再び俺に手を伸ばしてくれるジャナフ。
けど、俺はまるで人間を全く信用出来ずビビりまくった野良猫のように素早く後退りすると、その手を避けた。
怖い。
怖い。
人間が、怖いーー……?
ーーっ、違う!!
俺は、自分が、怖いんだーー。
「ツバサ!待ってッ……!!ツバサーーーッ!!」
呼び止めてくれるジャナフの言葉を振り切って、俺は駆け出すとその場を離れた。
……
…………。
小さい頃、何度も何度も色んな声を聞いた。
人間の心の声。
亡くなった人の声。
動物や植物の声。
それ、が他の人にとって"普通じゃない"って知らなかったあの頃。
ある日俺は、母さんのパート中に預けられていた保育所で、何気なく一緒に遊んでいた子達の前で言ってしまった。
亡くなった人の声が聞こえる事や、動物や植物の声については全く信じてもらえなかったけど、人間の心の声を聞く事が出来る事に関しては、不審がられるのはすぐだった。
ジャンケンに俺が連続で勝つ事。
クイズやなぞなぞの答えがすぐ分かる事。
かくれんぼや、色んな遊びを繰り返すうちに……。みんなの俺を見る目が変わっていた。