片翼を君にあげる②
***

蓮葉(レンハ)様、どうぞ」

「うむ、邪魔するぞ」

村の人達が私の宿泊先にと空けてくれた、丸太で出来た小屋。
干し草の上に布を被せた簡単な物だがベッドもあり、冷たい夜風もここならば十分にしのぐ事が出来る。

「只今、何か温かい飲み物を淹れて参ります」

「ありがとう、レベッカ」

扉がバタンッと閉まり、小屋の中には蓮葉(レンハ)様と私の二人きりになった。
蓮華国の主であり、アメフラシと呼ばれる天候を操る不思議な能力(ちから)を持った彼女。噂などで自分より若い、と言う事は知っていたが、小柄でこんなに可愛らしい少女だとは……。

「何じゃ?」

「!……え?」

「じっとこちらを見ておるからの。わしに何か問いたい事でもあるのか?」

ついつい、じっと見つめてしまっていた私に気付いた蓮葉(レンハ)様はニッと可愛い八重歯を見せて微笑った。私はハッとして答える。

「あ、いえ。何も……。
あ、でも……何故、私のお誘いを受け入れて下さったのですか?」

ツバサにもっともな事を言われて、反省して……。きっと蓮葉(レンハ)様も彼と同じ意見だと思った。
だから驚いた。彼女が私と共にここへ来てくれた事を……。

そう質問すると、蓮葉(レンハ)様はベッドに腰を掛け、自分の膝の上に両手で頬杖を着いて私をじっと見つめる。

「そなたと話がしたくての」

「私と?」

「ああ。そなたとツバサの事を色々聞きたいと思うたのじゃ」

「!……私とツバサの事、ですか?」

「うむ。聞かせてみよ」

驚いた。
まさか蓮葉(レンハ)様が私とツバサの事を聞きたいなんて……。

でも、私は嬉しかったの。

「っ……はい!聞いて下さい!」

私は笑顔で返事をすると、自分も隣のベッドに腰掛けて彼女と向かい合って話し始めた。
ツバサとの出会い、幼少期の想い出……。これまでの事を話し続けた。

だって嬉しかったんだもの。
こんな風に、女性同士で恋話が出来る事。ツバサとの事を聞いてもらえるのが、すごく嬉しかった。

途中で温かい飲み物をレベッカが持って来てくれたけど、私がそれを飲んだのはすっかり冷めてしまってからだった。
それくらい、夢中で、ツバサの事を話した。
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