片翼を君にあげる②
……
…………。
「……、……ふむ。
つまり、ツバサとそなたはずーっと遠距離で、今もなかなか会えない状態なんじゃな?」
「はい、そうなんです。
ツバサ、電話とかメッセージのやり取りも苦手みたいで……。あんまり話せなくて」
かれこれ1時間は経過しただろうか。
何だかだんだん悩み相談のようになってしまったけれど、今までこんなにツバサの事を誰にも語れなかった私は何とも言えない達成感と言うか、幸福感でいっぱいだった。
蓮葉様は歳下なのに、さすがは一国の主。話を聞くのがとても上手で、私はついつい話し過ぎてしまっていた。
「あ!すっかり長くお話ししてしまいましたねっ?すみません!」
ゆっくり休んで頂くつもりで声を掛けたのに、これでは逆に彼女を寝不足にしてしまう。
そう思った私が「そろそろ休まれますか?」と尋ねようとした時。私の言葉を遮って蓮葉様が言った。
「ならば、まだ接吻もしておらんのじゃな?」
「!……え?」
「接吻じゃ。キスじゃよ、キス。
そたなとツバサはまだしておらんのじゃな?」
「っ……キ、キス?ですかっ?……っ〜〜」
まさかの質問に、私は返事をにする前にもうすでに答えが一目瞭然に真っ赤になってしまう。
すると、それを見た蓮葉様はニッと微笑って言葉を続ける。
「安心したわい!
なら、わし等はまだ同等の立場じゃな?」
「?……同等の、立場?」
「うむ。そなたもわしも、ツバサとはまだ手を繋いだだけの仲。
そなたとツバサがもうすでに一歩前を行っておるなら不利じゃが……。まだなのなら、わしにも十分ツバサを婿に出来る可能性があると言う事じゃろう?」
「……」
蓮葉様にそう言われて、私の胸の中で小さく鼓動がトクンッと脈を打った。
当たり前の事に、今更、静かに気付いた。
何を当然のように、ツバサの恋人は自分だ、と思っていたのだろう?
確かにツバサは、私がサリウス様と政略結婚しなくても良いように戦ってくれているけど……。それまでに色んな経験や出会いをして、変わっていく事もある。
その中には当然、彼に想いを寄せ、言い寄る相手もいるであろう。