片翼を君にあげる②
「蓮葉様は、ツバサの事が……。好き、なんですか?」
先程の彼女の言葉を聞いたのだから、すでに答えが分かっている質問。
けれど、問わずにはいられなかった。
蓮葉様は即答する。
「ああ、好きじゃ!
初めて会った時からずっとな!」
少し頬を赤らめて、可愛く微笑む彼女。
意地悪や悪意を全く感じない。一国の主ではない、ただの少女の笑顔に、何も言えなくなる。
小柄で、女の子らしくて、歳下の可愛い女の子。
一方の自分は、どちらかと言うと女性の中では背が高くて、ツバサよりも歳上で……。
蓮葉様と私は、まるで逆だった。
……
…………。
その後。
小屋の明かりを消して、ベッドに横になっても私はなかなか眠れなかった。
そんな中で思い出すのは、やっぱりツバサの事。
いつだったか……。私は幼い頃、ずっと眼帯を着けていたツバサを不思議に思って、思わず外してしまった事があった。
眼帯の下にあったのは、漆黒の瞳。普通、黒って言うと何だか不気味に感じる色だけど、ツバサの瞳は全く違った。
上手く言えないけど、それは磨き上げられた黒い宝石ー黒曜石ーのようで、ずっと見ていたくなる程の美しさだった。
『ツバサはね、虹彩異色症である事と、俺と同じで普通の人とは違う能力を持っている事で、嫌な想いをしたんだ』
片目を隠そうとするツバサ。時折、悲しそうな、辛そうなツバサを不思議に思っていたら、彼の父親であるヴァロンさんが私に教えてくれた。
『だから傍に居て教えてやってくれ。お前は独りじゃない。大丈夫だよ、って……』
ーー私、行かなきゃ!
何故か、そう思った。
私は静かにベッドから身を起こすと、側の壁に掛けてあった上着を羽織る。
さっき見たツバサの表情は、子供の頃に見た悲しい、辛い表情と同じだった。傍に居てあげたい。
……何て、思いながらも、本当は自分が会いたかっただけかも知れない。
蓮葉様の真っ直ぐな気持ちを聞いて、自分がモヤモヤしているだけかも知れない。
でも、そんなのどちらでも良かった。
すぐに会える場所に居るのに、我慢なんてしたくなかった。