片翼を君にあげる②
『アメフラシの巫女さえ渡せば、他の者には手を出さない言う約束ではありませんかッ……!!」』
村長さんの言葉が、心の中で木霊した。
信じたくないが、理解する。
つまり、このゴロツキ達の目的は蓮葉様。そして、村長さんは……。それに加担していたのだ。
『軽率な考えと行動ですね。
村での蓮葉様へ向けられる視線に気付かなかったのですか?』
『女神と讃えられ、大切に扱われるうちに周りが見えなくなっているのでは?』
……
ツバサの、言う通りだ。
私、馬鹿だ……、……。
彼は冷静にこの村の様子や人を見て判断していたのに、私は上辺の笑顔や優しさしか見ていなくて……。きっと、暫くすれば村人と蓮葉様はすぐに分かり合えると思っていた。
……なんて、甘い考え、だったんだろう。
ツバサ、ごめんなさいっ……、……。
どれだけ悔やんでも、どれだけ謝っても、愛おしい人には届かない。
「よし!この女とアメフラシの巫女を連れてさっさとずらかるぞ!」
「!っ……おやめ下さい!レノアーノ様だけはッ……」
「うるせぇ!!」
必死に止めてくれようとした村長さんがリーダーに思いっきり殴られ、地面に倒れる。そしてその周りを、他のゴロツキ達が取り囲んだ。
村長さんは、蓮葉様を売った人ーー。
でも、私には見捨てる事は出来なかった。
「っ……やめて!!
……大人しく、します。だから、村の人達に酷い事はしないで」
何も出来ないのに、そう言っていた。
ただ私に出来たのは、大人しく攫われて、ゴロツキ達が村長さん達を傷付ける被害を少なくする事だけだった。
……
…………。