片翼を君にあげる②
《キミ、ふしぎなニオイだね〜!すき〜!》
「えっ?え?っ……ちょ、やめっ」
押し倒した俺の上に跨り、「わふっわふっ」とご機嫌に尻尾を振りながら舐めてくるのは犬。しかも、12歳の俺と同じ位の大きさがある大型犬だ。
そして、更に……。
《あらあら、かわいいおとこのこ〜!》
《ホントだ!ふしぎなニオイね〜!》
《ボクもすき〜!》
《わたしもすき〜!》
「ちょ、っ……や、やめっ!くすぐったいてぇ〜……ははっ!」
犬は一匹ではなかった。
仲間なのか、次から次に増え……。俺は気付くと5匹の犬達に囲まれていた。
突然押し倒されてビックリしたけど、人間以外の動物は嫌いじゃない。くすぐったいのと可愛いのに和んで、俺は思わず笑っていた。
その時……。
「こら〜〜〜っ!
お前達!何処行ってるんだ〜〜〜ッ!!」
「っ……?!」
その声にハッと我に返る。
尻餅を着いたまま顔を向けると、そこに居たのは俺と同じ歳位の、茶色いツンツンした短髪と吊り目が印象的な少年だった。
「!……ん?お前、誰だ?」
《コイツ、虹彩異色症……》
「!!ッーー……っ!」
驚き目を見開いた少年が見つめてくる。
俺は少年の心の声が流れ込んでくるのを防ぐ為に漆黒の瞳を閉じると、急いで眼帯を装着した。
しまった、油断してたーー……。
心臓が痛い位に高鳴る。
動揺した心を大丈夫だ、大丈夫だ、と落ち着けながら立ち上がった俺は、スケボーを手に取ると逃げるように駆け出そうとした。……けど。
「ーー……ッ、おわっ?!」
クンッと服の裾を引っ張られ、俺は歩みを止めた。顔だけ振り返ると、さっきの犬達が俺を引き止めていて、「く〜ん」と寂しそうに鳴く。
眼帯で塞いでしまったから声は聞こえないけれど、おそらく一緒に遊んでほしいのだろう。
すると、その光景を見た少年が言った。