片翼を君にあげる②
「へぇ、珍しいな。そいつ等がオレ以外に懐くなんて……。
コイツ等さ、みんな訳ありの保護犬だったんだよ。だから人間を怖がったり、威嚇したり……引き取った当初は大変だったんだぜ」
少年はそう言いながら、犬達の頭を撫でて俺に微笑った。
その笑顔と、撫でられた犬達が少年に擦り寄ったり飛び付く姿を見て、俺の心も少しずつ落ち着いていく。
動物好きや、動物に好かれる人に悪い人はいない。俺はそれが嘘でない事を知っているから……。
だから、ほんの少しだけ、信じてみようと思った。
「オレはセト!お前は?」
「……。ツバサ」
これが、セトとの出会いだった。
ほんの少しだけ、信じてみようーー。
でも。
そう思ったものの、なかなかすぐに変われるものではなかった。
俺は自分から話し掛けたりする事はなくて、いつもセトから。年齢が同じな事も、夢の配達人になりたいと言う夢が一緒な事も……。
セトが話し掛けてくる事に返事するだけで、笑顔を見せる事も出来なかった。
知れば知る程、仲良くなればなる程、拒絶された時に傷付くのが……俺は怖かったんだ。
……けど、ずっと後悔してた。
自分が傷付く事ばかりを恐れて、セトに歩み寄れなかった事。
そして、何も言わずに夢の配達人を一度辞めてしまった事。
俺がジャナフをすぐに受け入れたのは、今思えばその後悔があったからかも知れない。
だから、「疑う位なら、騙された方がマシだ」と、他人を信じたいと思ったんだ。
……
…………。