片翼を君にあげる②
「っ……ツ、……バサ?」
「……」
「そ、その瞳……っ、どうし……」
「下がってろ、ジャナフ」
俺はジャナフの言葉を最後まで聞かずに押し退けてセトに歩み寄る。すると、セトは震え上がりながらも狼達を俺に嗾けようと指示を出した。
「っ、お、お前達!ツバサをやっちまえッ……!!」
その言葉に、狼達は唸り声を上げたまま俺に飛び掛かって来ようとした。だが……。
ーー愚かだな。
「……お前ら如きに俺がやれると思うのか?この、下級生物がッ」
俺がそう呟くと、ビクッとして足を止めた狼達は「キャウンッ」と尻尾を後ろ足の間に巻いて怯え始める。更に瞳を合わせて威圧をかければ、どんどんと後ろに下がっていくばかりだ。
それを見て慌てたセトが叫ぶ。
「っ……何やってんだ!!お前達ッ……行けよッ!!ツバサをやれよッ……!!」
ああ、本当に……愚かな生き物だな。
そう思った俺は、自分が直接手を下すまでもないと思った。だから、セトがさっきまで従えていた狼達に言った。
「……さぁ、お前達。俺の手足となれ」
その言葉に、狼達はビクンッと反応すると……。一斉にセトの方に視線と身体を向けて、牙を剥き、激しい唸り声を上げ始める。
「っ、な、何だよッ……!お前達っ……どうしたんだよッ?!」
更に慌てるセト。
俺は、そんな奴に笑いながら言った。
「悪いな、セト。獣の扱いは、俺の方が上手い」
それ、が合図となり、狼達は一斉にセトに襲い掛かると、腕や脚に噛み付いた。痛みに耐え切れず悲鳴を上げたセトは地面に倒れて、そこに更に自由を奪うように狼達達が乗っかった。
すぐには楽にさせないーー。
ゆっくりと痛ぶってやろうと見ていると、ガッと誰かに腕を掴まれた。視線を向けると、そこに居たのは震えて涙を流しているジャナフ。