片翼を君にあげる②
「っ、……や、……やめてッ……っ」
「……」
「やめ、てよッ……ツバサ!」
俺の両肩を掴むと、ジャナフは震えを必死に抑えようとしながら俺に言った。
「死ん……じゃうよっ?」
「……何が?」
「っ、……セトさんッ!死んじゃうよッ……!!」
その言葉に、俺は笑った。
「あ、ははははっ……!」
何を言い出すのかと思ったら、そんな事かーー。
俺は、言葉を返す。
「……それが?」
「!っ、え……?」
「別にいいじゃないか。当然の報い、だろう?」
何が悪いのか、分からない。
だって、先に嗾けたのはセトじゃないか。
「俺は、当然の事しかしてない」
「っ……ツ、バサ」
俺が答えると、溢れ落ちる涙が手に滴った。でも、ジャナフが何故泣いているのか、俺には分からなかった。
こんな事をしても、蓮葉やレノアが攫われた事に対して何の解決にもならない。それなのに、そんな事も分からなくなる程にこの時の俺の心は能力に支配され、ただセトに天罰を下す事しか頭になかった。
このまま天使の能力に支配されたままだったら、俺は間違いなくセトを殺めていただろうーー……。
けど、…………。
「ゆっくりと痛ぶってやろうと思ったが、気が変わった。一思いに楽にしてやろう……」
「ーーダメッ!!」
セトに再び視線を移し、狼達に命じようとした瞬間だった。俺の言葉と行動を遮るようにして、ジャナフがグッと両肩を掴んでいた手に力を込めて離さない。
視線を戻して見ると、ジャナフが強い瞳で真っ直ぐに俺を見つめていた。
ーー……っ、?
……なん、だ…………?
すると、急に、身体が動かなくなって……。俺はジャナフから瞳を逸らせなくなった。ジャナフの瞳を通して不思議な能力に押さえ付けされたように、金縛りにあったかのように動けない。