片翼を君にあげる②
「私の元にもツバサ君から連絡が来たよ」
「!……お父様にも?」
「ああ。
最初の下剋上、決まったみたいだな。忙しいだろうにとても丁寧な文章で詳細を送ってくれてね」
丁寧な文章ーー?
その言葉に疑問を抱きながらお父様のポケ電の画面を見た。
すると、何と言う事だろう。それはパッと見てすぐに分かる、私の元に届いたメッセージよりも遥かに長い内容。
丁寧な挨拶文から始まり、下剋上の詳しい内容や日程、更に締めにお父様を気遣う言葉が添えられた文章。
自分に送られてくる一言文章の送り主と本当に同一人物が書いているのだろうか?と疑う程だ。
何よ、ツバサってば!しっかりした文章書けるんじゃない!
そりゃ、お父様相手に丁寧な文章を送るのは分かるけど……。あんなに書ける事があるなら、たまには私にももう少し色々書いてくれたって……。
お父様相手にこんな感情を抱いても仕方ないと思いつつもモヤモヤした、いわゆるヤキモチを妬かずにはいられない。
しかし。そんな私の心を一気に浮かせてくれるのは、なんとここまで散々困らされてきた筈の弟の無邪気な発言だった。
「姉上〜ツバサさんに何て返信するかまだ迷っておられるのですか?」
「う、う〜ん……」
複雑な気持ちが悶々として指が動かず、ポケ電を握り締めたまま画面を見つめた私の元に歩み寄って来たレオが言う。
「早くしないと父上が先に返信してしまいますよ?せっかくツバサさんは父上より先に姉上メッセージをくれたのに〜」
「!……。え、っ?」
「メッセージが届いた時間が、父上のものより姉上の方が3分だけど先でしたよ!だから、姉上も父上より先にお返事してあげなきゃ〜!」
「ッーー……!!」
メッセージの送信時間ーー?
文章の長さが先に目についてしまって私はそんなところ全く見ていなかった。
お父様も少し離れた場所でツバサへの返信を打っているから今となってはもう確認する事は出来ないが、目敏い弟が言った事はおそらく間違いではないだろう。