片翼を君にあげる②
蓮葉がアメフラシの儀式を成功させて、一週間後ーー……。
「レノア……!」
「!……ツバサ」
ボランティア活動を終えて、先にこの村から立とうとしていたレノアに俺は駆け寄った。
馬車に乗ろうとしていたレノアだったが、呼び止めた俺に気付くと嬉しそうに微笑ってくれて、レベッカさんに少し待ってもらうようお願いすると自らも歩み寄ってきてくれた。
久々の二人きりでの会話。先に口を開いたのは、やはりレノアだった。
「忙しいのに、わざわざ見送りに来てくれたの?
ツバサ達が次のアメフラシの場所へ移動するのも今日でしょ?」
「ああ。よく、知ってるな」
「ふふっ、勿論。蓮葉とは、もうすっかりお友達だもの!」
「……そっか」
そう。誘拐事件以来レノアと蓮葉は大の仲良しになって、この一週間互いの仕事の時以外は常に一緒に居たように思う。
護衛の仕事とは?と問い掛けたくなる程に、「ツバサ、女子同志の秘密の話じゃ!席を外せ」と言われて……。でも、そのお陰で俺もジャナフとセトとの時間を持つことが出来た。
ジャナフとは色々と話が出来るようになった事で絆が深くなったように感じるし、セトはあまり口は聞いてくれないけれど……ゆっくり、空いてしまった時間と心を埋めていこうと思う。諦めずに今度は俺が歩み寄っていけば、きっといつかもう一度向き合えると信じていた。
そんな風にこの数日の事を思い返していると、レノアが微笑って言った。
「……良い表情になったね!」
「ん?」
「もう、大丈夫?」
そう尋ねられて、やはりレノアにも俺のおかしかった事が悟られていたのだと知る。
「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう。
……それから、ごめんな?」
不安定だった俺は、レノアにも酷い態度を取り冷たい言葉を放った。
やってしまった事を今更取り消す事は出来ない。謝った位では許してもらえなくても仕方のない程の事だっただろう。
けど、レノアは首を横に振るといつもと変わらない笑顔を見せてくれた。