片翼を君にあげる②

浜辺での二人きりの時間、続けば二人の仲はより幸せなものへと変わっていた筈だった。
だが、二人が宿泊していた宿屋の主人は(おう)を攫った国王と繋がっており……。駆け付けた国王の手によって、(げつ)は銃殺されてしまう。

目の前で愛おしい人を奪われた(おう)能力(ちから)は暴走して、その深い哀しみが津波となり港町を飲み込んで、国王達も住人も……全て滅ぶ。

……
…………何度観ても、泣ける。
仕事でここに居ると言う事を忘れたら、完全にアウトだった。


その後は、(つき)能力(ちから)(げつ)の魂を来世へと導く(おう)だが、不慮の事故とは言え多くの命を奪った罪で、彼女はすぐに生まれ変わる事が出来ない。
けれど、必ずまた逢えると……。絶対に逢いに行くという想いを胸に、罪を償い続ける。
どんなに厳しくても、辛くても、歯を食いしばって上を向いて、微笑みながら……、……。


ーー真っ暗なステージの上で、コハルさんにだけスポットライトが当たって……。最後のシーンが、終わった。

ゆっくりと幕が降り始めると、観客席からものすごい歓声と拍手が湧き上がる。

胸が、震えたーー。

本番前のフルメイク姿より、汗で流れ落ちた今の方が何百倍も輝いて映る不思議さ。

幕が降りた舞台裏。
全てをやり切って、汗を流しながら微笑むコハルさんを見たら、自分の中にあった迷いが晴れる。

依頼人の想いor仕事の成功率ーー……?

ーーそんなの、きっと初めから決まってた。
俺達夢の配達人が1番大切にしなきゃいけないのは……。

いや。
それが例え間違っていても、俺が1番大切にしたいんだ。

……
…………。

そして、公演は順調に進み。
千秋楽を、迎えた。
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