片翼を君にあげる②
「へぇ〜。
やっぱ、お前に似てんな。初めて会った時のシュウにそっくりじゃん」
!!ーー……っ。
フッと笑って、顔を覗き込まれて頭を撫でられて……。嬉しいのに恥ずかしくて、この場から逃げ出してしまいたかったな。
でも、せっかく会わせてくれた父さんの手前そうもいかなくて、必死にバレないように微笑ってた。
極度の緊張で、会話なんてほとんど入って来なくて……。
気付いたら、父さんがヴァロンさんに頭を下げてて……。
どうやらその内容は、僕をヴァロンさんの弟子にしてやってほしい、と言う事だった。
ここまでの自分を振り返ると、それはきっと、これまではただ客観的に噂や情報紙などでただ憧れを抱いていた存在から、実際にその人に会って真の憧れに変わる、ガチなファンと同じような感情だったに違いない。
でも。
僕がヴァロンさんへ抱く感情は、この後あっという間に変わる。
「……それは。
俺達が決める事じゃなくね?」
そう言ったヴァロンさんが、再び父から僕に目を移した瞬間だった。
心を、鷲掴みにされるーー。
僕を見つめるその人は、もう僕の事を友人の子供として見てはいなかった。
射るような強い眼差しは、まるで獲物を挑発する獣。
「お前がどうしたいか、だろ?ミライ!」
ッーー……!!
ビクンッと、鷲掴みにされていた心が解放されて、身体中に一気に血液が巡る。ブルッとする程に感じた衝撃は恐怖に似ていたけど、同時に快感に近かった。
それは、自分一人で修行して、何かを習得した時に感じる達成感よりも遥かに上で……。ゾクゾクして、心の震えが止まらない。
「っ……頑張り、ます!」
心が叫んでた。
この人だ!って。
この人なら、僕をもっとワクワクさせてくれる、って。
「必ずヴァロンさんのような夢の配達人になりますッ!よろしくお願いしますっ……!!」
まるで生まれ変わったような感覚だった。
平凡で、何処か物足りなさを感じていた世界が、変わった気がしていた。