片翼を君にあげる②

仕事中の事故で、僕は大怪我をした。
普通のトラブルなら避けられる事故も、自然が生む災害が絡むと人間の力ではどうしようもない時がある。
台風による川の氾濫で、任務場所が崩壊。その場に居た人を非難させようとしていたら、強風で飛んできた破損物が命中。そのせいで動けなくなっていたら、建物が崩れて下敷きになった。

助かったのは、奇跡だったんだと思う。
こんなに身体の骨が折れて、身体中に怪我をして生きていたんだから……。不幸中の幸い、って言うのかな。

僕の救助で助かった人達からは、たくさん感謝された。
僕があの場に居たから助かった命がある訳で、誇って良い事だと思う。


……、……でも。
僕はそうは、思えなくなっていた。

助けなければ良かった。
お前達を助けたから、こんな怪我をした。
お前がいなければ、僕はこの手に白金バッジを手にしていたのにーー……!!

笑顔の裏で、心の中はグチャグチャだった。

誰よりも頑張っても届かない。
良い事をしても、報われない。
僕の夢は、いつも掴む前に失くなっていくんだから……。

目の前が真っ暗で、未来(さき)なんて見えない。

傷の回復を待って、リハビリをしても、仕事に復帰出来るのは最短でも約一年後ーー……。
その時、僕はもう17歳に近い。そこから落ちた筋力をつけて、白金バッジを取得出来る程になるにはどれくらいかかる?
仕事を休んでいた期間に、間違いなく降格してまた銀バッジからやり直しの僕が……。白金バッジになれるのは、いつだよ?

ぐるぐる、ぐるぐる……。暗い気持ちばかりが心の中で巡って、どれが自分の目指す答えなのか分からなかった。

『ヴァロンさんが辞めちゃっても、いつかボクが夢の配達人になって、白金バッジをまたお父さんに見せてあげるから!』

そう言って、父の為に夢の配達人を目指した時期もあった。

『絶対!ぜ~ったい!
ヴァロンさんよりもすごい夢の配達人になるからね!』

あの頃の無邪気で純粋な自分は、もういない。
もう、あの頃には戻れないーー……。

……
…………。

そして、また月日が過ぎる。
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