片翼を君にあげる②

何とか挽回しようと僕は笑顔を作って、もう一度歩み寄ろうと試みた。

「そっか!大事な絵本触ってごめんね。
あ、それなら……何かお菓子でも食べようか?」

お菓子。これならきっと、どんな子供であろうとイチコロであろう。
アカリさんから「良かったら食べてね」と言われていた焼き菓子がテーブルに用意されている。アカリさんの手作りお菓子は、自分も子供の時によく食べさせてもらって大好きだった。

コレを一緒に食べればきっと……。

そう思って声を掛ける。
が、ツバサはまたもや首を横に振った。

「まいの、やっ……」

「は?」

「まいの、やなの」

まいの、や???
何だそりゃ、何語だよそれ。

後に知る。
ツバサは甘い物が苦手で「甘いの嫌」って僕に訴えてくれていたんだ。
我が儘で言っていたり、僕が嫌いで困らせようとして言っていた訳じゃなくて、僕にただ教えてくれていただけだった。

けど。この時の僕は、ツバサがただ反抗しているんだと思って苛々が募っていくばかりだった。

こっちが優しくしてりゃ、いい気になりやがってーー。

思わずそう思ってしまった瞬間。
バッと僕の目の前に何かが飛び出して来た。咄嗟に身構えると、それは白猫と黒猫。二匹の猫が僕とツバサの間に入って、「シャーッ!!」っと毛を逆立てて鳴いた。

「!……リディア?」

突然の登場に驚いたがその猫、白猫の方を見て、僕は思い出して名前を呼ぶ。黒猫の方は知らないが、白猫の方は僕が昔遊びに来た時から飼われていて、当時は仲良く遊んだリディアだったからだ。

リディアを見て、当時の懐かしさが甦る。
けれど、そんな僕の気持ちとは対照にリディアは唸り声を上げて威嚇していた。
よく見ると、またツバサが怯えた瞳で僕を見ていて……。二匹の猫は、まるで僕からツバサを護るようにしていたのだ。

嘘だろ?
犬ならまだしも、猫ってこんなにも主人に忠実になるものなのか?

まさかとは思ったが、これはどう見ても猫達がツバサを助けようと必死になっている。
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