片翼を君にあげる②
***
「勝手に居座らないで下さいます?」
「やあ。おかえり、ノゾミ」
ここは港街にある妹の自宅。赤茶色いレンガが外観の可愛らしい二階建てのアパート。
玄関を開けるやいなやすぐ前に広がるリビングで寛いでいる僕を見付けて、ノゾミは分かりやすく不機嫌な表情で言った。
「はぁ」と溜め息を吐きながら靴を脱いで上がってくると、僕が座っているテーブルを挟んだ反対側の椅子に鞄を置き、身に着けていた時計やアクセサリーを外すと、ワンピースのホック、ファスナーに手を掛け脱ぎ始める。
「大胆だね、妹よ」
「別に。貴方相手に何とも思いません」
「ははっ。ホント、お前は格好良いね」
「……ナツキさんから報告がありましたよ」
「そ。ナツキ、なんて?」
「ツバサ君、依頼内容も依頼人への気遣いも完璧。そして、ナツキさん含め周りの人全てに夢を与えたそうです。
文句無しの出来。一つ目の金バッジ、獲得です」
「……そっか」
「……。
その様子だと、ここに来てるのはその件じゃありませんのね」
僕の返事や様子をみて、ノゾミは的確に判断した。僕がこの家に来ている理由を……。
「母はカンカンに怒り、ヒナタさんはとても心配しておりましたよ。
今からでも行ったらどうです?健康診断」
そう。
本当は今夜、僕は健康診断を受ける予定だった。
仕事をしている者ならば当たり前だが、働く為には身体が主本。それに夢の配達人はこの身を依頼人に預ける事から特に重要とされていて、年に一回必ず受ける事が定められている。
「……受けたくなくなった」
「受けたら夢の配達人を続けられなくなるかも知れないから……、ですか?
けど、受けなくてもそれは違法となり、夢の配達人ではいられなくなると思いますけど」
世間的にはあまり兄妹らしくない会話のやり取りかも知れないけど、こういう真剣な話をする場合は特に彼女との距離感が有り難い。兄や身内と言う想いよりも、仕事仲間と言う関係でノゾミは接してくれるから……。だから僕も、家族という情に流されず本音を話せる。
「勝手に居座らないで下さいます?」
「やあ。おかえり、ノゾミ」
ここは港街にある妹の自宅。赤茶色いレンガが外観の可愛らしい二階建てのアパート。
玄関を開けるやいなやすぐ前に広がるリビングで寛いでいる僕を見付けて、ノゾミは分かりやすく不機嫌な表情で言った。
「はぁ」と溜め息を吐きながら靴を脱いで上がってくると、僕が座っているテーブルを挟んだ反対側の椅子に鞄を置き、身に着けていた時計やアクセサリーを外すと、ワンピースのホック、ファスナーに手を掛け脱ぎ始める。
「大胆だね、妹よ」
「別に。貴方相手に何とも思いません」
「ははっ。ホント、お前は格好良いね」
「……ナツキさんから報告がありましたよ」
「そ。ナツキ、なんて?」
「ツバサ君、依頼内容も依頼人への気遣いも完璧。そして、ナツキさん含め周りの人全てに夢を与えたそうです。
文句無しの出来。一つ目の金バッジ、獲得です」
「……そっか」
「……。
その様子だと、ここに来てるのはその件じゃありませんのね」
僕の返事や様子をみて、ノゾミは的確に判断した。僕がこの家に来ている理由を……。
「母はカンカンに怒り、ヒナタさんはとても心配しておりましたよ。
今からでも行ったらどうです?健康診断」
そう。
本当は今夜、僕は健康診断を受ける予定だった。
仕事をしている者ならば当たり前だが、働く為には身体が主本。それに夢の配達人はこの身を依頼人に預ける事から特に重要とされていて、年に一回必ず受ける事が定められている。
「……受けたくなくなった」
「受けたら夢の配達人を続けられなくなるかも知れないから……、ですか?
けど、受けなくてもそれは違法となり、夢の配達人ではいられなくなると思いますけど」
世間的にはあまり兄妹らしくない会話のやり取りかも知れないけど、こういう真剣な話をする場合は特に彼女との距離感が有り難い。兄や身内と言う想いよりも、仕事仲間と言う関係でノゾミは接してくれるから……。だから僕も、家族という情に流されず本音を話せる。