片翼を君にあげる②
「妹の所、ですか?」
「貴殿には関係ない」
僕の問い掛けにそう答えると、瞬空さんは右側をすれ違っていく。
その瞬間見える右耳の耳飾りは、蓮華国の既婚者の証。そして同じ物を左耳に着ける事が出来るのは、本妻ただ一人だ。
"それ"が、妹の左耳に着いていないのが現実だとしても、一夫多妻の国出身である彼を責める事も、止める事も出来ない。
ノゾミもまた、難しい恋をしているーー。
けれど。
きっとそれは珍しい事じゃない。
そもそもこの広い世界で、たくさんの人の中から運命の人を見付けられる事自体が奇跡に近いのだから……。
たった一人を愛し、またたった一人に愛され、想いが通じ合って、その二人が結ばれる事は当たり前じゃない。
世の中には必ず自分の運命の相手が居て、ただ、一生のうちにその相手に巡り逢う事が出来るか分からないと聞いた。
だから人は、運命の人を探し、恋をして……。何度も何度も、間違えるんだ。
「……意地悪、だよねぇ」
もしも、一発で自分の運命の人が誰なのか分かったらみんな苦しい恋をしたりしない。初めから決まっているパズルのピースのように、カチッと、上手く当てはまるのに……。
……でもね。
心の何処かで、自分の本当の運命の相手じゃないと分かっていても、止められない。
出逢ってしまって、苦しい恋だと分かっていても、今の自分には1番大切で必要な人だから……。
だから僕は、ツバサが運命の人じゃなくてもこの人生を選ぶ。後悔は、しない。
……
…………。