僕が愛した歌姫
☆☆☆

白衣の俺。


まさか、この年齢になって白衣を着る日が来るなんて思ってもいなかった。


俺は目の前に並べられるコスプレグッズの数々に瞬きを繰り返す。


結局、俺に出来る事なんてこれくらいなんだ。


白衣を着て、バレないように院内へ入る。


そして、秘密の実験について探り出す。


ま、そんなのうまく行くなんて思っちゃいない。


なにか行動を起こさなきゃまた霧夜さんに脅されそうだから、とりあえずやったことにするのだ。


松葉杖をつく男が1人で雑貨屋に入って、白衣コスチュームを買っていく。


どう考えたっておかしな光景で、レジを打つお姉さんに笑われているんじゃないかとヒヤヒヤしながら店を出た。


リナとの楽しい時間や、キスしてしまった事実なんか遠い過去のようで、「なんで俺が……」という愚痴ばかりが転がり出るのだった……。
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