僕が愛した歌姫
誰かと鉢合わせしないかとハラハラしながら足音を忍ばせて歩く。


想像していた通り、この階には会議室などが並んでいるようだった。


自分のつく杖の音がヤケに大きく響いて、その度に冷や汗が吹きだしてくる。


なにやってんだ俺は。


なんでこんな所でこんなことしてんだ。


肝っ玉が弱いのは自分は一番よくわかってる。


ここにいるのが怖いのか、霧夜さんがこわいのか。


もうわけがわからなくなる。


顔面に汗が流れた時、《第三会議室》と書かれた部屋の中から誰かの話し声が聞こえてきて、俺は立ち止まった。


息を殺してドアにへばりつく。


ドアの向こうからは2人分の話し声がしていて、普通の会議ではない雰囲気なのはすぐにわかった。


ゴクリと生唾を飲み込んで聞き耳を立てる。
< 105 / 187 >

この作品をシェア

pagetop