僕が愛した歌姫
「……より……時期が……失敗……」


淡々と何かを語る男の声。


もう1人はそれに返事をしつつも、嗚咽が混じって言葉になっていない。


泣いてるのか?


誰だかもわからないその人物の涙に、俺は嫌な想像を膨らませる。


「きっともうすぐ……死んでしまう」


死んでしまう……?


肝心な部部だけが聞き取れなくてイラつく。


でも、今ハッキリ言ったよな?


死んでしまうって……。


入院患者の手術の話しかもしれない。


リナちゃんには無関係な話しなのかもしれない。


でも……。


俺はいてもたってもいられなくなってしまった……。
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