僕が愛した歌姫
帰ってきてそのまま脱ぎ捨ててしまった白衣を見ながら、聞いてきた。


「一応は……」


曖昧に答え、小さな冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出して霧夜さんへすすめる。


霧夜さんはそれを受け取り、けれど口は付けずに「で、どうだった?」と、話しをすすめてきた。


「どうと言っても……」


『失敗した』


リナの言葉をまた思い出す。


これを言っていいのかどうか、躊躇する。


「実験は失敗したんだろう?」


俺の様子を見て悟ったのか、霧夜さんは呟くようにそう言った。


「……はい」
< 117 / 187 >

この作品をシェア

pagetop