僕が愛した歌姫
だけどどうしても、来たかったんだ。


リナに、今すぐ会いたくて。


いつもリナと会話をする中央まで来ると、俺は窓の下を覗いた。


ちょうど真下に花が見える。


「クウナちゃん……?」


本当に、あれがクウナちゃんなのか?


どこからどう見てもそれは大きな花でしかなくて、風が吹けば心地よさそうに揺れている。


「ナオキ君……?」


聞きなれた細いその声に驚いて、俺は窓から離れた。


「リナ……ちゃん」


いるはずがないリナがそこにいて、会いに来たくせに一瞬たじろく。
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