僕が愛した歌姫
☆☆☆

夜中の病院は外から見ても異様な光景だった。


ヒロシは三階にかかる渡り廊下を見上げて「あそこで会ったのか」と、呟くように言った。


「行くぞ」


小声で身を縮め、敷地内へと入っていく。


正面玄関を左に見て真っ直ぐと特別病棟の立っている方へと急ぐ。


本館が途切れて渡り廊下がすぐ上に見えると、大きな花が夜風に吹かれて揺れている。


「入り口はどこだ?」


特別病棟の入り口は裏にある。


表から見えるのは窓もない大きな建物だけだった。


「こっちだ」


俺はヒロシの先に立ち、足音に気をつけながら進んでいく。


入り口が近づくにつれて嫌な汗をかく。
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