僕が愛した歌姫
☆☆☆

非常口の扉を開けると、昨日見たのと同じラセン階段が広がった。


病院の非常階段なのに、なんでラセンなんだろうな。


俺みたいに足の悪い奴なんかは降りにくくて仕方ないのに。


なんて思いながら、一段づつ降りていく。


昨日は夜中だったから気づかなかったけど、この非常階段はクリーム色のペンキで塗られていて全く禿げていない。


塗ったばかり?


それとも、誰もここを使ってないって事か?


非常時なんか滅多に無いから後者の方が正しいような気もするけど……。


なんとなく、違和感が喉につっかえる。


そして、お目当ての三階まで下りてきた。


半分は夢であってほしいと願っていたけれど、そこには俺の見た渡り廊下への扉がそびえ立っていた。


ここだ……。


立ち止まり、汗のにじむ手でノブに手をかける。
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