僕が愛した歌姫
そう言ってヒロシが袋から取り出したのは――。


18禁雑誌。


コンビニの奥にズラーリと並んでいるような、アレだ。


しかも、なにを考えてなのかナースもの。


「お前はアホかよ。誰がこの状態でそんなもん使うんだよ」


俺は見事に骨折した右足を擦り傷だけで済んだ左手で指差して言った。


「でもさぁ~ここのナースってメッチャ可愛いじゃん!? さっきナースステーションで病室聞いた時にモロ当たり!! って思ったもん。お前いいよなぁ~俺も事故ろうかなぁ」


なんて事を本気で考えて悩んでいるヒロシに、俺は大きなため息をついた。

バカだ。


本気でバカ。


買い物袋の中からお菓子とジュースだけ取り出して、俺は袋ごとヒロシにつき返してやった。


「なんだよぉ人がせっかく持ってきたのに」


「いらねぇよ、お前が使え」


「え? 俺使っていいの? マジ? ラッキー」
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