僕が愛した歌姫
「満足したならとっとと帰れ」


「はいはい。お邪魔虫は帰りますけど……ナースといい関係になれたら絶対に教えろよ!!」


ヒロシは俺の耳元でそう言うと、ニカッと笑って病室を出て行った。


ったく。


なんだよあいつは。


ヒロシの後姿を見送ってから軽く笑う。


あいつの頭の中には女しかないらしい。


俺とヒロシは同じ施設出の友人で、なにかにつけて一緒にいる。


一般の学校になかなか馴染めなかったのも原因の1つにあるけど、施設ってのは同じ先生を親として共有するような場所でもある。


だから、いわば兄弟だ。


施設を出た今、俺は施設の近くにアパートを借りて仕事をしている。


ヒロシは他の施設へボランティアで出向いたり、小遣い稼ぎのために子供向けのライダーショーに出演したりしている。


うん。


あんな奴だけど子供好きなんだ。
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