僕が愛した歌姫
名前を聞き出したと同時に腕を思いっきりひっぱられて、歩き出す。


松葉杖をつきながら精一杯男の歩調に合わせる俺。


「おい、あんた誰だよ」


そんな問いかけにも、男は答えない。


どこへ向かっているのかもわからないまま、ズンズンと突き進んでいく。


俺は、強すぎる男の手を振りほどく事もできず、半分涙目になりつつ、ついていくしかなかった……。

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