僕が愛した歌姫
☆☆☆

そして、付いた先はといえば――。


屋上。


昼間は患者さんたちが洗濯物を干す場所としても使っているから、当然俺もここへ来た事はある。


が、夜にこんな大男と2人でくれば雰囲気も随分と違う。


「あの……」


俺は、恐る恐る声をかける。


さっきまで『おい、あんた』なんて言っていたのが嘘みたいだ。


「正直に答えろ」


男は振り向かないまま、背中せそう言ってきた。


「ナオキ、お前は昨日、リナと会ったのか?」


その言葉に俺は目を大きく見開く。


リナ――?
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