僕が愛した歌姫
質問には答えず、うなり声を上げるように霧夜は言った。


「かいかまで、時間がない……」


かい……か?


「なんですかそれ? 『かいか』って、何の事ですか?」


「俺には何も言えない。俺はお前に道をあけてやった、後は任せたからな」


そう言うと、霧夜さんは俺を残して行ってしまった。


「霧夜さん!!」


最後にそう呼んでも、振り向いてはくれなかった――。
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