僕が愛した歌姫
「っていうかさぁ、ちょっと小耳に挟んだんだけどぉ」


俺は上半身を鳥越さんに近づけて小声で言った。


女ってなんで噂話しとか、ここだけの話しとか好きなんだろうな?


まぁ、俺は退院が決まってる患者だから、鳥越さんもつい気が緩んで口も緩んじゃったんだろうけど。


「この病院、あの歌姫リナの父親の病院だって聞いたんだけどさぁ……」


「ど、ど、どこでそれを!?」


明らかに挙動不審になる鳥越ナース。


霧夜さんの言ってた事は本当か……。


「噂だよ噂。別に信じてないって」


そう言って笑い声を上げると、鳥越ナースはチラリと意味ありげな視線を投げてきた。


『話したい』


顔にそう書いてある。

< 78 / 187 >

この作品をシェア

pagetop