精霊王の娘
夜になればこのあたりには獣が出るのだと、下卑た笑い声をあげながらゴルゴドが踵を返した。

ゴルゴドのそばにいた火の中級精霊が、何度もリリエナを振り返りながら、ゴルゴドのあとを追いかける。

残されたリリエナは、木の幹に縛り付けられた大勢のまま途方に暮れた。

巻き起こった風は、ゴルゴドの姿が見えなくなると、すーっと空に吸い上げられるようにおさまって、あたりは静けさに包まれる。

ぐす、とリリエナは鼻をすすった。

ゴルゴドの言う通り、夜になれば獣が現れるだろう。身動きの取れない六歳児など、あっという間に獣の餌だ。

「おじいちゃん……」

先週グードが他界して、悲しくて悲しくて――、ようやくその悲しみを少し呑み込めたと思った矢先に、グードとの思い出の住処を追われて森に捨てられるなんてあんまりだ。

ぐずぐず泣いている間にも、あたりはどんどん薄暗くなる。

狼の遠吠えが聞こえた。

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