精霊王の娘
1章 追放されたのでのんびり気ままに暮らしています
夜。
窓から銀色の光が差し込む、ひっそりとした深更。
ディルバルグ国王都リバイドル。
城下町シラーから南西にある森の中に、ひっそりと建つ小さな家のリビングで、コトリ……、とわずかな物音が響く。
小さな室内の中央には木で作られて丸いテーブル。それを取り囲むように、四脚の椅子が並んでいる。
奥にはこれまた小さなキッチンがあって、そのサイズに不似合いな大きな鍋がおいてある。
月明かりが唯一の光だった暗い室内にあった燭台に独りでに明かりがともり、ひゅうっと一陣の風が部屋の中で巻き起こった――、その直後のこと。
「ただいまからぁー! 作戦会議をはじめりゅのですぅー!」
とう! という掛け声とともに、何もなかった空間に真っ白い毛玉が現れた。
毛玉は空中でくるりと一回転すると、すちゃっと木製のテーブルの上に降り立つ。その際、ポーズをとることも忘れない。後ろ足二本で立ち、ぴしっと片方の前足を天井に向けて突き出すのだ。このポーズを白い毛玉はいたく気に入っている。
白い毛玉はよく見ればふわふわの毛に覆われた小型の犬のような姿をしていた。風の下級精霊、エンリーである。
決まったぜ――、金色の丸い目を細めてニヤリと笑ったエンリーは、しかし、その直後にすぐ頭上に現れた毛玉に押しつぶされた。
「ぐえっ」