精霊王の娘
まず、エンリーの号令で集まってきた土の下級精霊たちがリリエナが縛り付けられていた二つ並んだ大木を魔術で複雑に絡み合わせて、あれよあれよと小さな家を作った。リビングと寝室しかない家だが、子供のリリエナにはちょうどいいサイズである。

そして、エンリーと暮らしはじめたこの家に、日に日に下級精霊が集まって来て、あっという間にびっくりするほどの大家族になってしまった。精霊たちは好きに姿を消したり現わしたりできるので、ぱっと見ではわからないが、おそらく三十人以上の精霊たちが集まっている。

精霊たちはみんなもふもふした小型動物の姿をしているので、にぎやかだし可愛くていいのだが、自分の周りにこんなにもたくさんの精霊が集まってきたことがリリエナは不思議でならない。なぜなら彼らはリリエナと契約しているわけではなく、ただ「家族」として集まってきたのだ。謎である。

エンリーの呼ぶ声を聞いて、眠たい目をこすりながらもそもそと起き上がったリリエナは、寝ぐせであちこち飛び跳ねている翡翠のような緑色をした髪を手櫛で整えた。

ぴょんとベッドから飛び降りる。六歳児の姿のリリエナには、ベッドはやや高い。眠るときにはよじ登り、起きるときには飛び降りる。これがまた大変なので、いつか土の下級精霊たちに頼んで踏み台を作ってもらいたいところだ。

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