玉響なる風は鳴る
「……強い悪霊の気配を感じたからねぇ。急いで、葉月と真冬を連れてきたのだよ」

そう言って、颯は微笑んだ。

「あの、あなたは……?」

風音の父親の言葉に、颯は風音の父親に目を移す。そして、口を開いた。

「僕は、風神の颯。君は、千風の息子かい?千風に良く似ている」

「……親父の名前を、どうして知っている?」

「説明は、後でする。あの悪霊を浄化した後にでも」

そう言って、颯は戦闘態勢になる。その時、颯たちの周りを悪霊が囲んだ。

「……あの悪霊の気配につられて、やっぱり来たのかい……」

そう呟いて、颯は扇子を開くと凄まじい威力の風を起こして悪霊を浄化する。

「風音!僕らは周りの悪霊を浄化するから、あの悪霊を頼んでも良いかい?」

颯の言葉に、風音は驚きながら颯の方を向いた。風音と目を合わせた颯は、優しく微笑むと頷く。

風音も頷くと、大きな悪霊と向き合った。



「……っ」

風音はその場から大きく飛び退くと、大きく息を吐く。風音の頬を、汗が伝った。

(……霊力が、尽きかけてる……)

風音は扇子を構え直すと、悪霊を見据える。風音の視界がぼやけ、風音は立っていることも出来ずに地面に倒れ込んだ。

「……風音!?」

(……もう、無理……)

風音は、そのまま意識を失う。颯は、すぐに風音に近づいた。
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