玉響なる風は鳴る
「……風音」

颯が風音の体を揺さぶると、風音はゆっくりと目を開く。風音と目を合わせた颯は、安堵のため息をついた。

「……」

風音はゆっくりと体を起こし、辺りを見渡すとキョトンとした顔で颯を見つめる。

「……風音、大丈夫かい?」

颯は風音の様子がおかしいことに気が付き、風音に声をかけた。

「風音とは、一体誰のことですか?」

風音の口から出た言葉に、その場にいた全員が驚く。風音は近くに落ちていた扇子を手に取ると、キョロキョロと辺りを見渡した。

「これは、あの人に渡した……どうして、扇子がこんなところに……?」

「……もしかして、君は……」

風音の発言に、颯はそう呟く。風音は、ゆっくりと颯を見ると優しく微笑んだ。

「お兄様……」

「……志奈(しな)……なんだね?」

颯は、そう言って風音に抱きつく。葉月、真冬、風音の両親は、黙って見ていることしか出来なかった。

「はい。志奈でございます……お兄様、背が低くなりました?何だか、お兄様が小さく見えます……それに、ここは……?」

「説明は、後でする。とりあえず、志奈ならあの悪霊を浄化出来るだろう?頼めるかい?」

風音(志奈)から離れた颯は、悪霊を見つめながらそう言う。風音(志奈)は、悪霊を見つめるとふっと笑った。
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