玉響なる風は鳴る
「お兄様の望みであれば、お安い御用です」

風音(志奈)は扇子を振り上げると、強風を起こして空へと飛び上がる。そこから見える景色、体にある違和感に、風音(志奈)はあることに気が付いた。

(……お兄様が私を風音、と呼んだ理由……もしかして……私は、この子に憑依したのでしょうか?彼女がこの扇子を持っていて、私が力を問題なく使えている……ということは、彼女は私の――)

「……いえ、それを考えるのは後にしましょう」

風音(志奈)は、そう呟くと扇子を横に風を切るように振る。次の瞬間、風の刃がたくさん悪霊に向かって飛んでいった。

「逃がしません」

風の刃を避ける可能性を考えた風音(志奈)は、扇子を口元に当てると悪霊の周りに風を起こし、悪霊の身動きを取れないようにする。

風の刃は悪霊を斬り刻み、悪霊は塵となって消えていった。

「……これで大丈夫でしょう」

風音(志奈)は地面に着地すると、扇子を閉じる。

「……風音……?」

「……私は、風音ではありません。風神の志奈と申します」

風音(志奈)は、葉月たちの方を向きながら自己紹介をした。

「志奈は、僕の妹なんだ……2歳年下のね」
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