玉響なる風は鳴る
受け入れられなくても
あれから数日後の朝休み。
葉月は自分の席に座り、ぼんやりと外を眺める風音を心配そうに見つめていた。
あの日から風音は葉月を避けるようになり、葉月はなかなか風音に声をかけれないでいる。
「よう……榎本。最近、五十嵐の様子が変じゃねぇか?」
葉月の前の席に座っていた男子が、葉月の方を向くと声をかけた。
「……そうだね」
「お前、五十嵐と仲良いだろ?何か知らねぇか?」
「知らない」
何も聞くな、と言いたげに葉月は男子の質問を適当に返す。
「そうだ……なぁ、榎本……この扇子、誰のか知らねぇか?登校中、拾ったんだが……」
そう言って、男子はカバンから葉月にとっては見覚えのある扇子を取り出した。
「……僕、これの持ち主知ってるから返してくる」
男子から扇子を受け取った葉月は、立ち上がると風音に近づく。そして、閉じられた扇子で軽く風音の肩を叩いた。
「これ、落ちてたって……クラスメイトが拾ってくれた」
葉月は、風音に扇子を差し出す。風音は、無言で葉月を見つめた。
風音はどこか思い詰めた表情をしており、教室にかかっている時計をちらりと見た葉月は風音の腕を掴む。
「ちょっと来て」
「え?うん……」