玉響なる風は鳴る
「そんなに急がなくても良いのだけれど……」

教室に入りながら、颯は穴に近づく。真冬は、葉月の近くに移動すると立ち止まる。

「……颯さん……」

「……必要な結界は、全て張り終えた。葉月と真冬は、風音を援護しに行くんだ。僕は、ここでこの子を見ている」

葉月と真冬は、颯と目を合わせると同時に走り出す。葉月たちに襲ってくる悪霊を、2人は蹴り飛ばしながら昇降口へと向かった。



「……っ……」

風音は倒れそうになるのを我慢しながら、悪霊に攻撃を続けていた。

「風音!」

葉月と真冬は風音の隣に移動すると、風音に目を移す。

「……風音、少し休みな。霊力、尽きかけているんでしょ?」

真冬の言葉に風音は「でも」と返すと、扇子を構え直した。

「……倒れるから、ダメ」

「大丈夫」

「……」

真冬が何を言っても聞かないと感じた葉月は、無理やり風音を葉月の方に向かせると、葉月は風音にキスをする。

「……え……?」

風音は、耳まで顔を赤くさせるとその場に座り込んだ。

「よし。これで、しばらくは動けないでしょ……真冬、行くよ」

にやりと笑った葉月は、風音から顔を逸らすように悪霊と向き合うと顔を赤くする。

「……」

(葉月、大胆なことをするな……)
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