玉響なる風は鳴る
夕焼けに染まった空の下で
あれから数日後の放課後。
風音と葉月は、屋上から綺麗な校舎を見下ろしていた。
「……本当に、あの結界はすごいね。校舎、結構破壊されたのに……結界を解いた瞬間何事もなかったかのように綺麗になったし、皆騒ぎを知らないし……」
葉月の言葉に、風音は「そうだね」と答える。
「……あの時、急にキスをしてごめんね……えっと、風音を動けなくするには……ああするしかなくて……でも……僕の、本心でもあるから!」
「え……?」
葉月の言葉に、風音は驚きながら葉月の方を向いた。
「……初めて風音と話した時、僕は『風音のことが苦手だ』って言ったでしょ?」
「そういや、言ってたね」
「でも、風音と話してて苦手意識はなくなって……最初は、風音が自分のことをかっこいいって思うところが苦手だったんだけど……でも、今はそれも悪くはないなって……風音って、本当にかっこいいよね!」
「……ふっ。そうだろう?いつだって、僕はかっこいいんだ」
風音が笑うと、葉月は「はは、何それ」と笑い出す。
「風音って、本当にすごいよ。自分をかっこよく見せるために行動するんじゃなくて、ちゃんと相手のことを考えて行動してるんだから……でも、自分のことも考えて欲しいな。僕は、風音を失いたくない……だって、風音が好きだから……」