玉響なる風は鳴る
それを見た葉月は、自分も同じような扇子を持っていたことを思い出す。

(……僕が良く知る風音なら、傷付くのが嫌だから逃げるかと思っていたのに……)

「……葉月、逃げないの?怪我するよ?」

立ち尽くしている葉月に近づいた風音は、扇子を拾いながら問いかけた。

「……風音は、傷付くの嫌じゃないの?」

「嫌じゃない」

はっきりとそう答えた風音は、扇子を構え直すと悪霊と向き合う。

「……!」

(……どうして、僕は風音のことが苦手だったんだろう?僕も、風音の力になりたい……どうすれば……)

葉月はポケットから扇子を取り出すと、扇子を握り締めた。その時、葉月の扇子が光を放つ。

それを見た葉月の体が、勝手に動いた。まるで、初めから使い方を分かっていたかのように。

葉月が扇子を開くと、葉月の周りに温かな風が優しく吹いた。その風を浴びた風音の傷が、少しずつ塞がっていく。

「……!」

(回復……!ありがたい!)

風音は葉月と目を合わせると、優しく微笑んだ。



「なるほど……珍しいな」

放課後になり、颯のもとを尋ねた風音と葉月は、今日あった出来事を話す。

「……葉月みたいに、自力で能力を開花させる能力者も珍しいのだよ」

そう言って、颯は葉月に近づくと葉月の耳元で呟いた。

「……風音を、全力で守れ。僕の、――だからねぇ」

颯の言葉に、葉月は驚くしか出来なかった。
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