今夜もあなたと月、見ます。
「今帰りー?さっきはどうも」
「おかげさまでニコチンが足りませーん!あっはは」
…こ、こわい
よりによってあの2人
バイクに跨ったまま私の行先を防ぎ、さらに挟むように隣に並ぶ
めちゃめちゃ身長が高いわけではないが
ガタイが良くていかにも力がありそうな男2人
今はしっかり顔が見れないけれど、蛇のような鋭い目つきをよく覚えている
「なあ、あんたのせいでイライラしてんだけどさぁ責任とってくんなーい?」
せ、責任?
「なーに簡単簡単。ちょっと俺たちについて来てくれればいいだけだからさぁ。店員さんよく見たらめっちゃ可愛いし、酷いことしないからさ」
……い、いやだ
怖い
逃げなきゃ
誰かに助けを…
いや、誰にも頼れない
自分で逃げなきゃダメだ
ニヤニヤ笑いながら私の肩に手を伸ばす男
その手を思い切り振り払った
さらにもう片方の男の足を思い切り踏む
「イッテェ!」
そのまま振り返らずに走った
「チッ、待てクソ女!」
荒げた声が響き渡る
相手はバイク
すぐに追いつかれる
ならバイクの通れない場所に行けばいい!
ブルルルッ
とエンジン音が響くと同時に細い路地に入り込んだ
そのままさらに奥へ奥へと走って行く