今夜もあなたと月、見ます。
「あ、月だ」
え?
謎のお礼に首を傾げていたら、響紀さんが前方を指差して言った
「あ、本当だ」
いつのまにか日は完全に落ちて、月が上がっていた
屋上にはほんのり明るいランプがあり、隣で月を見る響紀さんの顔ははっきり見える
屋上から見て、ちょうどまっすぐ前にある月
半分に届いているのかいないのか、もどかしいような形に見えるが、大体半円になっている
「半月ですかね」
「いや、あれは更待月だね」
ふけまち…づき?
「半月の手前の月だよ。欠けて行ってる最中かな」
へぇ…
「詳しいんですね」
「まあね」
ふふ、あいかわらず
「ロマンチストですね」
「ロマンチストですから」
綺麗に声が重なり、思わずお互いを見て笑う
あ、楽しいかもしれない
久々に感じたこのあったかい感覚
胸が少しジンジンする感覚
そして、それと並行して感じる
ちょっと苦しい、甘酸っぱい感覚
暖かさを感じるジンジンと同時に聞こえるのは
締め付けるようなドキドキという胸の音