今夜もあなたと月、見ます。



「晴、手出して」



不意にそう言った響紀さんが私に向かって手を差し伸べている

よくわからないまま、その手の上に自分の手を乗せる

チャリ

小さな金属音が鳴り、少しだけ鉄の重みを感じる

「あげる」



握らされたそれを見るために、ゆっくり手を開いた


「鍵…ですか?」

「うん。ここの鍵。屋上のドアの」

「…どうして?」

「晴ならいつでも来ていいよ。逃げたい時、一人になりたい時、俺に会いたくなった時」

最後のはちょっと揶揄うような音だったけど

私にとって一番の目的は、もしかしたら最後のものになるかもしれない


「だからまたおいで。満月の日にでも
一緒に月、見よう」

…うん

「わかりました」

ぎゅっと、独特な形をしたその鍵を握りしめた

拳から溢れるように下にぶらんと垂れたのは鍵についていたキーホルダー

白い三日月のキーホルダー


「俺も会いに行くよ、晴に。あのコンビニでバイク止めて待ってる」



「うん」


だから、また


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