今夜もあなたと月、見ます。
3 下弦の月



「晴ー?晴ー!」

ほわ…

「晴!」



机を叩かれてびくっと身体を揺らす

「もう!聞いてるの?さっきから上の空だよ晴」

「桃音、ごめんなんだった?」

「んもー!なんだったじゃないでしょ!こっちが聞いてんの!なんでそんなポワポワしてんの?」

それは…そりゃ

色々あったから

「何よーもしかして恋煩い?」


…恋?



恋ってのは

…恋ってのは

なんだっけ

「え、ちょっ!何その反応!まじなの!?まじで恋しちゃったの?」

桃音が目を輝かせる

「晴にもついに春がきた!?はるだけにー!」

「騒がないでよ」




って、誰かを好きになることでしょ?

誰かって…誰



チラリと脳内をよぎる響紀さんの顔



ブンブンと顔を振る


「晴ってばぁ!何々?詳しく聞かせてよ」

「そ、そんなんじゃないから!」

「またまた〜お相手は?あっもしかして横井くん?」

…?

よこい…くんって


「あっ!」


風組!

昨日の出来事がフラッシュバックする

そうだ、横井くん!

あの後の響紀さんとの出来事が濃すぎて忘れかけていたそれを思い出して思わず声が出る


「びっくりした…どしたの?」

「桃音!横井くんは?」

「え?あーさっきは教室にいたけど、ちょっと前くらいに出てった気がする」

追わねば!


「あっ、ちょっと晴!どこ行くの!」

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