今夜もあなたと月、見ます。


思わず振り向くと、靴も脱がずに鞄も持ったままのおじさん

…あ、穴?

穴って…破けたって…


ふっ

「ふふっ…ふふ、あははっ」

「!」

「これはオフショルダーって言って元から肩が出るようになってるデザインだよ、ふふっふふふっ」


思わずその素っ頓狂な質問に笑ってしまう

真面目に言ってるんだろうから余計に面白い

トレンドだって言ってたよお姉さん

街にもこの服の人いっぱいいるでしょ?

見かけるたびに破けてんなーって思ってたの?


「あっははは!」

だめだツボった

おかしくて仕方ない

このイケオジ鈍すぎる


ひーおかし…い………あ。


しばらくして自分がとんでもないことをやらかしたことに気づく

や、やばい

おじさんの前で派手に笑ってしまった

普段は会話すら避けているというのに

こんなに感情をダダ漏れにしてしまった


さっきまでの笑いを急激に冷まして、おじさんをそっと見る

相変わらず目を丸くして私を見ている


「あ…ご、ごめんなさい。すぐに着替えて家事するよ」

今度こそ部屋に向かおうと背を向ける

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