今夜もあなたと月、見ます。


「…何してんの?」



心地の良いようで、なぜか鳥肌が立つ低音の声

その声は私の後ろから聞こえた

これは


「響紀さん」

振り向いたそこには、にっこり笑った響紀さんがいた

あまりにも綺麗で絵に描けそうな作り物の笑み


響紀さんだ。

何も考えず、私の足はまっすぐそちらへ向かった


「あ、おい!」

男の人の声を無視して早歩きで向かう


響紀さんが私に手を伸ばした

その手を掴んだ瞬間ぐんっと引き寄せられる

「ごめん待たせた」

「いえ、私が早く着いたので」

響紀さんの手が私の背中に回る

思わずドキリと心臓が鳴った


「…なんだよ待ち合わせって彼氏かよ」

「男いんのかよ」

二人組がぶつぶつと文句を言い出し
チラリとこちらを見てから背を向けた

なんなの?感じ悪いな


「晴」



「ちょっとここで待ってて」

え?

「はい…?」

響紀さんが私の頭を撫でて二人組の方へ歩き出す


なんだろ

< 140 / 177 >

この作品をシェア

pagetop