今夜もあなたと月、見ます。


…それはそれは

「もったいないですね」

「え?」


だってこんなにかっこよくて、強くて、優しいんだよ?

数時間横に立ってるだけで惚れちゃうよ?

「響紀さんには好きになる要素が盛りだくさんなのに」


何気なく言った私の言葉に
響紀さんが顔を真っ赤にしてフリーズしていたことは
この時の私は気づかなかったけれど


「まあ響紀さんまだまだ若いんですからこれからですよきっと」

「…そっか、」



煮え切らない返事をした彼を見る

と、どう言う感情なのかとびきり優しい目で私を見ていた



ドクン


と、確実に恋の音を立てる心臓の鳴き声


…響紀さんが今まで彼女を作ったことがないという事実にホッとしている自分がいて

この先、おそらく現れるであろう響紀さんの隣に並べる恋人を想像して勝手に不安になる

側から見れば馬鹿みたいだけど、恋とはこういうものだ

好きな人の一挙一動にありえないくらい振り回される



響紀さんの隣に立つ相手に、私がなることはできますか?

あなたの恋人に、私がなれる可能性はありますか?


もちろんそんなことは言えず、ただ、響紀さんと同じように精一杯の優しい目を向ける

それが今の私にできたことだ

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